重松 清 / 小学館(2004/07)
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「エイジ」や「ナイフ」とは全く違う重松清作品・・・

重松版ファンタジー官能小説

夢で逢えたら
『なぎさの媚薬』の話をする。
君を抱きたい――
現実には抱けなかった君を。夜の渋谷にたたずむ娼婦・なぎさは、
孤独な男たちに夢を見せる。
それは、青春時代の忘れ物を取り戻す、せつなく甘い夢――。
(帯・表より)
「どうも薬を服まされるみたいだぞ、なぎさを買うと」
なにがなんだか、さっぱりわからない。
思い切り胡散臭く、眉唾もので、リアリティのかけらもない話だった。
それでも――。
少年時代に出会った女性とセックスをするという、
そのイメージだけは妙に鮮明だった。
(帯・裏より)
最初に一つささいなエピソードを。
私はこの本を電車の中で読んでいた。夜の埼京線。雪が待っていた。一番端っこの席に座り、肩肘ついて真剣に、多分真剣に読んでいた。
すると、20代前半だろうか、可愛い女の子が僕の前のつり革に捕まって立っていた。私が読んでいるのはそう『なぎさの媚薬』だ。セックス。ヴァギナ。ペニス。舐める・・・。そんな単語が隅々にちりばめられた小説だ。
その電車を負担は利用していない私は、本に没頭しながらたまに「今、どの駅だろう」とそわそわ辺りを見回す。
その時、あれ?へんだぞ?
上を見ると、その可愛い女の子と目が合った。女の子はニヤニヤ笑っていた。
そりゃそうだよな。電車の中だもん。電車の中で官能小説ってか?笑わせるぜ!
きっと彼女は私のことを変体だと思っただろう。
でも言い訳。この本を読んでいるとき私の息子(おなかの下にあるやつ)は元気なかったのですよ。
興奮しなかったといえば嘘かもしれないけど、屹立しなかった。
なぜか。ここからが本編。
「なぎさ」。それは、寂しい人、孤独な人の前に現れる娼婦である。
敦夫は左遷。研介は新妻に欲情できずにいた。そんな2人の前に「なぎさ」は現れたのである。
話は上手く進みすぎているところもあるが、「なぎさ」とセックスをすると、今まで出会った人、セックスすることが出来なかったけど想いを寄せていた人とセックスすることが出来る。
敦夫、研介が想いを寄せていた人は不幸な人生に陥っているのである。
二人ともその人を救うことができるか。
なぎさと寝ると過去に戻れるのだが、自分の人生を変えることは出来ない。だけど、その夢の中で寝た人の人生は変えられる、かもしれない。
敦夫は誰と寝るのか。そして誰を救うのか。救えることが出来るのか。
研介はどうだ。現実の彼の妻も辛い人生を歩んできた。研介も影を背負って生きている。変えられるか。救えるか。
この話で興奮はあまりしなかったと言った。それは、重松特有の「なにか」を含んでいるからである。単なる官能小説では終らない。
生き方、考え方など、重松の思想が十分に反映されている作品である。